コミュニティーファンドレイザーのお仕事とは?

「ファンドレイザーって、寄付を集める人?」
「コミュニティーファンドレイザーって何をしてるの?」
そう聞かれることがよくあります。
今回は、ホープでファンドレイザーとして10年以上携わっている私、松浦の仕事についてご紹介しつつ、ホープの活動の広がりについてもお伝えできたらと思います。
今まで話したことがない、ファンドレイザーのお仕事のちょっと舞台裏のお話です。
ファンドレイザーは「お金を集める」だけの人ではありません
ファンドレイザーというと「寄付集め」の印象が強いかもしれませんが、私が大切にしているのは、団体のミッションを達成するために必要なあらゆるリソースを集めることです。
そのリソースは、もちろんお金だけではありません。
例えば:
- モノ(物資、スペース、機材など)
- 人(ボランティア、インターン、パートナー企業など)
- 情報やつながり
ホープでは、これらのリソースをどう活かすかを考えながら、地域に根ざした活動を展開しています。コミュニティーファンドレイザーは、そうした「地域とのつながり」や「仲間づくり」を担う仕事です。

地域の中に「仲間」をつくる
ホープでは、国内でもさまざまなイベントを開催しています。チャリティーディナー、ウォークイベント、クラウドファンディング、報告会、勉強会など…。これらを一緒に企画・運営してくれる仲間がいて、はじめて成り立ちます。
ボランティアの関わり方も多種多様です。
- イベントの企画段階から関わってくれるボランティアさん
- 当日の運営を担ってくれる「1日ボランティア」さん
- 会場には来られないけれど、事前の事務作業や発送作業を手伝ってくれる方
こうした方々と「一緒に」活動をつくっていくのが、私の大きな役割です。
また、企業との連携も重要な柱です。ご寄付だけでなく、イベントへのスポンサーシップ、自社スペースの提供、社員ボランティアの派遣、企業内勉強会の実施など、多様な形で関わってくださる企業も増えています。
ホープの特色は「インターナショナル」と「バイリンガル」
ホープの大きな特色のひとつが、インターナショナルなつながりとバイリンガル対応です。
たとえば、名古屋では長年東海地方に住む外国人コミュニティと関係を築いています。関西では、駐在員の方やそのご家族のネットワークともつながっています。
また、アメリカ商工会議所(ACCJ)や各国の商工会議所のネットワーキングイベントにも積極的に参加。海外ルーツを持つ人たちにも、ホープの活動を知ってもらい、仲間として巻き込む努力を続けています。
こうした「グローバルなつながり」があるのは、他の団体にはあまり見られない、ホープならではの強みです。
関係づくりも立派なファンドレイジング
ファンドレイジングの手法は、寄付やイベントだけではありません。
実は、日々の人との出会いやつながりを育てることも大事な仕事のひとつです。
私も、さまざまなビジネス系の会合や、地域の勉強会、異業種交流会に参加しています。新しいつながりをつくることで、ホープの活動を知っていただいたり、次の協働の種が芽生えたりすることもあります。
ここで大切にしているのが、「聞く力」です。
相手の話をよく聞いて、
「この人は何が得意で、何に関心があるのか」
「この人の会社には、どんなリソースがあるのか」
…そうした情報を、自分の“頭の中の引き出し”に入れておきます。
するとある日、「〇〇が必要だ」となった時に、「そういえば、あのとき出会った〇〇さんがそれを持っていな!」とつながることがよくあります。
一方的に伝えるのではなく、相手のやっていることを聞いて知る。
そのうえで、「この人と何かできるかも」と感じたら、小さな関わりから提案してみる。
それが、コミュニティーファンドレイザーとしての、私なりのスタンスです。

料理人のような仕事です
コミュニティーファンドレイザーの仕事を一言で言うなら、料理人のようなものです。
目の前にある素材――スペース、人、時間、熱意、地域性……そうしたものを見極めて、「どんな組み合わせで活動を形にすれば効果的か」を考えます。
たとえば、ある企業から「うちのフリースペースを使ってくれていいですよ」と提案されたことがありました。そのとき私はスペースだけでなく、「この場所に来る人たちと、どうつながれるか」「企業の社員も一緒に楽しめる仕掛けがあるか」までを含めて企画しました。
結果として、ボランティア主体のチャリティーイベントとなり、企業・ボランティア・来場者の三者にとって心地よい関わりが生まれました。
つまり、素材は同じでも、組み合わせや味付け次第で、まったく違う成果につながる。
それがこの仕事の面白さであり、奥深さです。
主体性を引き出すファシリテーターとして
私がとくに大切にしているのは、ボランティアさんの主体性を引き出すことです。
スタッフだからといって「指示する」のではなく、
「イベント企画に携わったことありますか?」
「あなたならどのように情報発信していきたいですか?」
など、その人の経験を引き出したり、考えを聞いたり、常に問いかけるようにしています。
これは、私が海外の現場で学んだことでもあります。
現地の人が自分で考え、行動し、変化を生み出す。その姿勢を日本の活動にも応用しています。「ホープの活動」に関わっていたはずが、やがて「私たちの活動」になっていく。そんな瞬間に立ち会えるのが、私にとって最高のやりがいです。

「伝えることの難しさ」に向き合い続ける
とはいえ、楽しいことばかりではありません。
ホープが取り組んでいるのは、アフリカや東南アジアなど、日本ではあまり知られていない地域の課題です。それらの地域に行ったことがない人にとっては、想像しにくい世界です。
だからこそ、支援者の方に活動を「どう伝えるか」「どうイメージしてもらうか」は、いつも悩みどころです。10年以上ファンドレイザーをしていますが、「伝えること」は今でも試行錯誤の連続です。
でも、だからこそ続けがいがある。
「伝わらなかったから終わり」ではなく、どうすれば届くかを考え続けることが、コミュニティーファンドレイザーとしての責任だと思っています。
最後に
コミュニティーファンドレイザーという仕事は、人と人、想いと行動、そしてリソースとリソースをつなぎ合わせながら、社会に小さな波を起こしていく役割だと感じています。
ミッションを実現するためには、単にお金を集めるのではなく、必要な人材・知識・場所・時間といったさまざまな「力」を見極め、それらをどう活かし、誰と共に進むかを考える力が求められます。
その過程では、ある時はボランティアの個性を引き出すファシリテーターに、ある時は企業と市民の接点をつくる通訳者に、またある時は、静かに話を聴いて関係を編み直すリスナーにもなります。状況に応じて立場を変えながら、でも常に目の前の人の声に耳を傾ける――その柔軟さが、私のこの仕事に対する誇りでもあります。
この仕事の醍醐味は、「巻き込む」だけに終わらず、「ともに考え、動いていく関係を育てること」にあります。誰かの想いがかたちになり、そのかたちがまた誰かを動かす。そうして生まれる循環が、静かに、でも確実に、社会の景色を変えていく。
そんな変化のはじまりに立ち会えることに、やりがいを感じています。
ホープの活動は、皆さまからのご寄付に支えられています。