カンボジア再訪-映像作家の希望と感謝の旅
こんにちは、大村絵玲奈です。以前はホープのスタッフでした。現在はチェコ共和国のプラハを拠点に映像作家として活動しています。ホープがカンボジアで行っている安全な水の供給事業を応援する映像作品、「Every Drop Counts」を監督・制作できたことは、私にとって大きな喜びでした。最近は映像制作会社「Ishiki Studios」を立ち上げ、映像を通して社会に変化を起こすことを目指しています。
8年ぶりの事業地再訪で感じたこと
ホープのスタッフ時代にカンボジアを何度も訪れ、プロジェクトの現場を見てきました。しかし、最後に訪問してから8年以上が経っており、再び現地に足を運んでみると、その変化に驚かされました。かつてインフラが全く整っていなかった地域には道路ができ、活気ある商店が立ち並び、ホープ・カンボジアのオフィスも、さらに遠く離れた地域の人々を支援するため、事業地の近くへ移転していました。
そしてなにより重要なのは、過去に出会った家族の暮らしが大きく変わっていたことです。彼らの暮らしを見て、私は本当に励まされました。今回の映像でも紹介しているサバンさんとポエンさんの家族は、8年前に出会ったときは日々の生活が成り立つかどうかの状況でしたが、今では果物や野菜をたくさん育て、新しい家を建て、娘さんたちも全員が学校に通えるようになっていました。
撮影を通して見えた現地の様子と人びとの反応
今回の映像は、安全な水が人々の貧困からの脱却や自立にどれほど大きな影響を与えるか、ということを伝えるために作りました。けれども私にとってこの作品の大きなテーマは「感謝」かもしれません。
まず私たちが現地で出会ったすべての家族の心からの感謝です。彼らは井戸の水のおかげで果物や野菜を育てられるようになり、そうして収穫した食べ物を私たちにも分けようとしてくれます。また、困難な状況にいる家族を支えるために多くの時間と人生を捧げ「この仕事は私の人生に与えられた最大の贈りもの」と語るカンボジア・ホープのスタッフたちの感謝も感じられます。そしてまた、世界へ支援という形で意味ある影響を与えられること、安全な水にアクセスできること、多くの人が当たり前に享受しているこの事実に気づき、感謝の気持ちを持てること、そうした想いが支援者の心にも響いてほしいと願っています。
完成した作品について
この作品で大切にしたかったのは、現地の人びとの声をそのまま伝えることでした。あらかじめ用意した台本を読むのではなく、家族やホープ・スタッフの心からの言葉をそのまま届ける――それこそがドキュメンタリーの本質だと思ったからです。
井戸を持たない家族がどんな水を飲んでいるのか、井戸を手にした家族の美しい笑顔、安全な水があることで子どもを学校に送り出し、体を洗ってあげられるようになった親たちの目に宿る希望を、多くの人に見てもらいたいと願っています。
そして同時に、私たちが日々水を使えることがどれほど幸運なことかを感じてもらいたいです。現地の家族たちは、この貴重な資源を決して当たり前のものとは思っていません。彼らがどれだけ感謝の気持ちを込めて、お返しをしようとしてくれているか、その姿を知ってほしいです。
ホープが大切にしてきたことの一つに、持続可能な開発があります。問題を根本的に解決できない一時的な対処ではなく、地域の人びとが自分たちの力で問題を解決できるようにする、そこに本当に意味があると、私はずっと感じてきました。
けれども何より私の心を動かすのは、ホープのスタッフが人びとに向き合う姿勢です。
困難を抱える家庭に謙虚に寄り添い、時間をかけて状況や必要を理解し、信頼を築いていく。その関わりは一朝一夕にできるものではありません。スタッフたちが家族と一緒に地面に座り、同じ目線で語り合い、「あなたの声は届いている」、「あなたは見えない存在ではない」と伝える、そんな積み重ねによって関係が生まれていきます。そして今回の映像もまた、その姿勢を描いたものなのです。
雨にも負けず、風にも強い
この記事を読んでくださり、本当にありがとうございます。また映像をご覧いただいた皆さまにも感謝申し上げます。
この作品は「誰かの問題の方が大きい」と主張するものではなく、「感謝」についての作品です。
この映像を制作できたこと、そして人と人とが分かち合える希望や善意を思い出させてもらえたことに、心から感謝しています。
現地で素晴らしい人たちと時間を過ごし、自分の技術を意味あることに活かし、そして自分がどれほど幸運であるかを改めて知ることができたこと――それは私自身にとって大きな贈り物でした。この思いは、プロボノでこの作品に関わったチーム全員に共通するものだと思います。
ホープの活動は、皆さまからのご寄付に支えられています。